鳥居元忠（とりい・もとただ）
三河の人（1539～1600）
 
 徳川家康が幼少期、今川家の人質だった頃からの腹心。
家康に絶対的な忠誠を誓い、戦功をたたえられ感状（感謝状。浪人し他家に仕官する際に実力を証明するものとなる）を与えられようとしたが、「家康以外の人物に仕えるつもりはない」と断った。
また豊臣秀吉に再三、官位に推挙されようとしたときも、「主君以外の者にもらう筋合いはない」と拒否した。
重要な戦にしばしば駆り出され、激戦で足を負傷し歩行に異常をきたしていたが、旗本として三方ヶ原の戦いなどで活躍した。

1600年、家康が上杉景勝（うえすぎ・かげかつ　上杉謙信の跡継ぎ）の征伐に赴くと、その隙をつき石田三成ら豊臣方は家康に向けて挙兵した。
元忠はわずかな兵で伏見城に立てこもり、最期は鈴木重朝（すずき・しげとも　雑賀孫市の正体とも言われる）と一騎打ちの末に討ち取られ、玉砕を遂げた。
伏見城の床は血に染まり、のちに京都各所の寺の天井板に使われ、血天井として今も伝えられている。

関ヶ原の戦い後、捕らわれた石田三成は元忠の三男・鳥居成次（とりい・なりつぐ）に預けられた。三成は父の仇として殺されると覚悟したが、成次は「三成の処遇は家康が決めること。むしろ小大名でありながらよく家康と戦った」と賞賛し、三成を手厚くもてなしたという。


～逸話～
堅物に思われる元忠だが、こんな話も伝わっている。
武田家滅亡後、武田の重臣・馬場信春（ばば・のぶはる）の娘を探すよう命じられたが、元忠は発見できなかったと報告した。
後日、信春の娘が実は元忠の本妻になっていたと聞き及んだ家康は、笑ってそれを許したという。